もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2019年 2月 15日 第198国会 本会議

地方税制ゆがめる 地方税法改定案 本村議員追及 衆院本会議

しんぶん赤旗 2019年2月16日

地方税制ゆがめる 地方税法改定案 本村議員追及 衆院本会議

 2019年度の地方財政計画と地方税法などの改定案の趣旨説明と質疑が15日、衆院本会議で行われ、日本共産党の本村伸子議員が質疑に立ち、税制の見直しを求めました。

 政府が新設を狙う特別法人事業税は、地方の財源を国が取り上げ、他の自治体に配分するもの。本村氏は「地方税制の原則に背く」と批判しました。

 森林整備などを目的に創設する予定の「森林環境税」は、東日本大震災からの復旧・復興を口実とする個人住民税均等割への上乗せ増税を、24年度以降も続けようとするものです。

 本村氏は、温室効果ガス排出の主な原因者である排出企業が負担していないと追及しました。

 地方交付税の財源保障機能と財政調整機能を十分に発揮することこそ「憲法と地方自治制度に基づく地方財政のあり方だ」と強調。地方交付税の法定率の引き上げを求めました。富裕層と大企業への応分の負担と、税制の総合的な見直しを迫り、「地方税制に新たなゆがみを持ちこむことは許されない」と批判しました。

 本村氏は、国が自治体に迫ってきた職員削減路線が「行政の現場を危機的事態に追いやっている」と糾弾。職員数削減率を交付税算定の基準にするのをやめるよう求めました。

 石田真敏総務相は、児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき、児童相談所の体制強化を行うことを踏まえ「20年度以降、見直す予定」と答弁しました。

 

議事録

198-衆-本会議-6号 2019年2月15日

○本村伸子君 私は、日本共産党を代表して、二〇一九年度地方財政計画外四法案に対し質問をいたします。(拍手)
 まず、統計不正調査の問題です。
 一九四七年、統計法の立法趣旨は、客観的な認識のために必要な正確な統計が失われたために、国民に戦争の惨禍をもたらしたことを反省し、次のように述べています。日本国民は、この痛ましい経験を反省し、今後は正確な統計に基づく現実の科学的認識を平和なる建設の道標として国民全ての前に打ち立てることを固く期さなければならない。
 総理、公的統計は国民の共有財産です。その共有財産が深刻に傷つけられているという認識と反省はありますか。
 うそと組織的隠蔽は、国民に対する極めて重大な背信行為であり、絶対に許されません。統計不正の真相を徹底的に究明して、公的統計の中立性と信頼性を取り戻し、政治からの独立性を明確にするべきです。答弁を求めます。
 千葉県野田市の十歳の栗原心愛さんが、虐待で命を失いました。心から哀悼の意をささげます。
 心愛さん自身がSOSを発し、一時保護など、児童相談所も対応してきたのです。守れる命を守れなかった。ここを出発点としなければなりません。
 総理、児童虐待がふえている根本的な原因をどう認識されていますか。
 児童相談所の体制強化、児童福祉司、児童心理司の大幅増員を一刻も早く進めるべきです。
 学校、保育所、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター、児童養護施設など、専門機関の体制と連携を強化するとともに、全ての職員が徹底して子供の視点に立つ専門性を身につけるために、国が総力を挙げるべきです。
 また、国は、現場への専門家の派遣や弁護士配置への支援、定員超過の一時保護所の増設など、具体的支援に乗り出すべきです。
 困難を抱える御家庭や妊婦さんにきめ細かく支援をする質の高い養育支援訪問事業を全ての自治体で行うために、予算と人を抜本的に拡充するべきです。
 地方財政についてです。
 第一に、消費税の一〇%増税です。
 総理、増税が、上下水道料金や給食費、公営バス、施設使用料など、あらゆる公共サービス料金の引上げにつながることは必至です。さらに、地域の医療機関の経営を圧迫することも明らかです。住民生活に大打撃となる消費税の一〇%増税は、きっぱりと中止するべきです。
 第二に、法案は地方税制に新たなゆがみを持ち込むものです。
 総理、自治体間の財政力の格差は消費税の増税のたびに拡大してきたという認識はありますか。
 特別法人事業税の創設は、地方の財源を国が取り上げ、ほかの自治体に回すというやり方です。これは、地方税制の原則に背くものではありませんか。国による地方税制の悪用は許されません。
 さらに、森林環境税です。
 これは、東日本大震災を口実に持ち込んだ個人住民税均等割への上乗せ増税千円を、期限が切れる二〇二四年度以降、今度は森林環境税と看板をかえて取り続けるものです。温室効果ガス排出の主な原因者である排出企業の負担を求めないのはなぜですか。
 地方交付税によって、地方の財源を保障するとともに、自治体間の財政調整機能を果たすというのが憲法と地方自治に基づく地方財政のあり方です。
 地方交付税の法定率を抜本的に引き上げる考えはないのですか。富裕層と大企業に応分の負担を求め、税制を総合的に見直すべきです。地方税財政に新たなゆがみを持ち込むことは許されません。
 次に、自治体行政のあり方です。
 安倍総理は、公共サービスの産業化を強調し、水道事業の広域化、民間委託とコンセッション方式を進めようとしています。
 これに対し、静岡県浜松市では、多くの市民が命の水を守れと声を上げ、コンセッション導入は延期に追い込まれています。海外でも再公営化の動きが広がっています。住民の暮らしを支える公共サービスを、利益優先の大企業に売り渡す市場化はやめるべきです。
 もう一つ、職員の確保です。
 統計専任職員の増員や、たび重なる自然災害からの復旧復興、防災を担う技術系職員などの人員確保は喫緊の課題です。
 総理には、国が自治体に迫ってきた職員の削減路線が、今や行政のさまざまな現場を危機的な事態に追いやっているという認識はありますか。
 学童保育の指導員の配置基準を改悪し、子供の安全確保を後退させることは許されません。職員の数の削減率を交付税算定の評価の基準とする仕組みは直ちにやめるべきです。
 最後に、沖縄県の米軍新基地建設の問題です。
 県知事選挙で示された辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意を踏みにじり、埋立土砂の投入を強行する安倍政権に断固として抗議をいたします。
 政府は、辺野古の北側海域の軟弱地盤の存在を認めました。埋立工事は直ちに中止し、誠実に沖縄県と話し合うべきです。
 内閣府沖縄担当部局が所管する沖縄振興費は、沖縄県が増額を強く求める一括交付金を、制度創設以来最低水準にまで削る一方、県を介さない市町村向けの新たな交付金を創設するとしています。
 これは、新基地建設に反対を貫く沖縄県への嫌がらせそのものではありませんか。基地建設に協力的か否かによって予算額を増減させ、地方の財政を左右するやり方は直ちにやめるべきです。
 国家権力を総動員し、問答無用に米軍新基地の建設を進めることは、憲法と地方自治に真っ向から反するものであり、断じて許されません。
 以上、申し述べ、質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 本村伸子議員にお答えをいたします。
 統計不正の問題に関してお尋ねがありました。
 公的統計は、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報です。
 しかしながら、毎月勤労統計について、不適切な調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわび申し上げます。
 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめています。
 いただいた御批判は真摯に受けとめ、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要です。
 厚生労働省の特別監察委員会においては、先般、それまでに明らかになった事実等について報告書を取りまとめていただいたところですが、今般、委員会のもとに、元最高検検事の方を事務局長に迎え、民間有識者で構成される事務局が新たに設置されたところであり、より独立性を強めた形で裏づけや検証作業を進めていただいています。
 また、統計委員会においては、既に点検検証部会を設置したところであり、基幹統計のほか、一般統計も加えて、徹底した検証を行うこととしています。
 こうした取組を通じて再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
 児童虐待防止対策についてお尋ねがありました。
 児童虐待相談対応件数の増加の背景には、核家族化による育児不安を抱える方の増加等が考えられることから、児童虐待防止対策については、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速、的確な対応、被虐待児童への自立支援が重要と認識しており、政府としては、そのために必要な体制強化、職員の専門性の向上、関係機関の連携強化などに取り組んでいます。
 まず、児童相談所等の体制強化及び専門性向上については、一時保護所の整備費に係る補助の拡充、現在三千名の児童福祉司を、来年度、一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とするなど、児童相談所の体制の抜本的強化を図ることとしています。
 これに加えて、児童心理司を八百名増員するとともに、全ての児童相談所に保健師を配置するほか、弁護士の配置促進や、平成二十八年度の児童福祉法改正により義務化された研修の推進などに取り組んでいます。
 関係機関の連携強化については、昨年七月の緊急総合対策に基づき、児童相談所と学校、病院等の関係機関の連携強化に取り組んできましたが、今月八日の関係閣僚会議で、その点検、徹底を指示しました。
 養育支援が特に必要な家庭に相談、助言や家事援助を行う養育支援訪問事業については、子ども・子育て支援交付金において補助を行っていますが、来年度予算では百億円以上を増額し、より多くの市町村で事業が実施されるよう取り組んでまいります。
 何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
 消費税率引上げについてお尋ねがありました。
 消費税は、公共サービスを含む消費に上乗せする形で薄く広く御負担いただくものであり、負担が特定の世代に集中せず、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していることから、社会保障に係る費用を賄うための財源としてふさわしいと考えています。
 その上で、消費税率の一〇%への引上げは、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するためにどうしても必要なものです。
 引上げに当たっては、消費税に逆進性があることに鑑み、低所得者など真に支援を必要とする層にしっかりと支援の手が行き届くよう、軽減税率制度の実施、教育無償化や低年金者への給付等の社会保障の充実策の実施などを行うこととしております。
 こうした低所得者対策等を講じた上で、リーマン・ショック級の出来事がない限り、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定であると繰り返し申し上げており、この方針に変更はございません。
 地方税制と地方財政のあり方についてお尋ねがありました。
 地方消費税は地域間の偏在性が小さい税であり、また、地方消費税率の引上げに伴う地域間の財政力格差の拡大については、地方法人課税の偏在是正措置を講じているところです。地方消費税の引上げのたびに地域間の財政力格差が拡大したとは考えておりません。
 特別法人事業税については、偏在性が小さい地方税体系を構築する観点から創設するものです。その税収の全額は、譲与税として、客観的基準に基づき地方に再配分される仕組みであり、実質的な地方税源であることから、地方の財源を国が取り上げるなどの御指摘は当たりません。
 税制の総合的な見直しに言及していただきましたが、今後の税制のあり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えています。
 地方財政については、地方の行政サービスに係る財源はできるだけ地方税により賄うとともに、地方交付税との適切な組合せにより、その必要額を安定的に確保することが重要と考えます。
 地方税の充実確保に取り組むとともに、地方交付税については、今後とも、法定率の見直しなど制度的な対応の議論も行いつつ、財源保障機能と財源調整機能が適切に発揮されるよう、必要な総額の確保を図ってまいります。
 以上を踏まえれば、今回提案している法案が地方税制にゆがみをもたらすとの御指摘は当たりません。
 水道事業のコンセッション方式の導入等についてお尋ねがありました。
 先般の国会で成立をした改正水道法は、PFIの一類型であるコンセッション方式について、海外の再公営化事例の教訓を踏まえ、地方自治体が引き続き水道事業の最終責任を維持することなど、公の関与を強化した仕組みとするものであり、利益優先の大企業に売り渡すものではありません。
 また、あくまでも官民連携の選択肢の一つであり、住民サービスの向上や業務効率化等のメリットが大きいと判断した自治体のみが導入するものです。これにより、水道事業の基盤強化を図ってまいります。
 地方公共団体の職員の確保と放課後児童クラブの指導員の配置基準についてお尋ねがありました。
 地方公共団体の定員管理については、地域の実情を踏まえつつ、各団体において自主的に御判断いただくものと認識をしています。
 地方公共団体においては、総職員数を抑制する中においても、例えば、防災対策に携わる職員や、土木・建築技師、児童相談所等の職員は増加するなど、行政需要の変化に対応しためり張りのある人員配置を行っていると承知しています。
 引き続き、各団体において、効率的で質の高い行政の実現に向け、適正な定員管理の推進に取り組むことが重要と考えています。
 放課後児童クラブに従事する者の資格と人員については、地方が従うべき基準を参酌すべき基準に改める法案を提出することを予定していますが、これは、地域の実情に応じて、利用者が少ない場合の特例を定めることなどを可能にするものです。
 放課後児童クラブにおけるサービスの質をしっかりと確保することは当然の前提であり、この法案において、特例を定める場合には、市町村議会の審議を経て、条例で定めることとしています。また、これにあわせて、放課後児童クラブの職員について、研修や処遇改善等の取組を推進してまいります。
 普天間飛行場の辺野古移設と沖縄振興予算についてお尋ねがありました。
 住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府と地元の皆様の共通認識であると思います。
 米軍キャンプ・シュワブの北側海域については、地盤改良工事が必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法により、護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であることが確認され、今後、沖縄防衛局において、地盤改良に係る具体的な設計等の検討を十分に行うものと承知しています。
 政府としては、今後とも、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでまいります。
 また、平成三十一年度の沖縄振興予算における一括交付金は、沖縄県が作成した、これまでの事業計画における実績を踏まえ、所要額が確保されているものと認識しています。
 一方、沖縄振興特定事業推進費は、一括交付金を補完し、機動性を持って迅速、柔軟に対応すべき市町村等の事業を推進する予算として計上したものです。
 それぞれの目的に必要な額を確保したものであり、御指摘は当たりません。
 今後とも、沖縄振興策を総合的、積極的に推進してまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣石田真敏君登壇〕
○国務大臣(石田真敏君) 本村議員にお答えをいたします。
 まず、森林環境税の納税義務者についてお尋ねがございました。
 森林は、地球温暖化防止や災害防止等の公益的機能を有し、広く国民一人一人が恩恵を受けているため、その整備等に必要な財源となる森林環境税は、国民に広く均等に御負担をいただくことにいたしております。
 一方で、法人につきましては、産業界のこれまでの温室効果ガスの排出削減への取組や、地球温暖化対策のための税を負担していることなど、地球温暖化対策に係る取組に貢献していることなどを勘案し、さらなる負担を求めないこととしたところであります。
 次に、職員数削減率を用いた交付税の算定についてお尋ねがございました。
 普通交付税の算定におきましては、職員数削減率といった指標を用いて行政改革の取組を算定に反映しています。
 一方、児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき児童相談所の体制強化を行う必要があること等を踏まえ、職員数削減率を用いた算定につきましては、平成三十二年度算定以降、見直しを行う予定でございます。(拍手)
   

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