しんぶん赤旗 2021年5月28日
職務給の原則を壊す 改正地公法 本村氏、引き下げ批判
改正地方公務員法が20日の衆院本会議で採決され、全会一致で可決しました。
同法は、国家公務員の定年を65歳に引き上げたことを踏まえ、地方公務員でも定年延長措置を前提に、(1)役職定年制の導入(2)定年前再任用短時間勤務職員制度の創設(3)60歳に達する職員への60歳以後の情報提供・意思確認制度の創設―をするもの。正規職員として勤務できる期間が延長され、生活関連手当が支給されるなど、現行の再任用職員より処遇は改善されます。
日本共産党の本村伸子議員は18日の衆院総務委員会で、60歳を超えた職員の給与を7割に引き下げる問題を追及。ある自治体の平均的な給与水準で、60歳時の月額34万4800円から7割下がれば24万1400円と最低生計費水準になると指摘し、「職務給原則を壊す」として引き下げをやめるよう求めました。
本村氏は、定年延長と新規採用を両立させるための財源措置を要求。武田良太総務相は「定年引き上げ期間中でも一定の新規採用の継続的な確保が必要だ。地方財政措置は自治体の実態なども踏まえ、検討する」と答弁しました。
議事録
204-衆-総務委員会-17号 2021年5月18日
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
まず、ワクチン接種の関係で質問をさせていただきたいというふうに思います。
自治体の中で、ワクチン接種に関する部署の職員の皆さんが過労死ラインを超えて長時間労働になっているということが様々なニュースでも報道をされております。例えば神奈川県庁では、ワクチン接種の担当部署の半数以上の職員の方が過労死ラインを超えて勤務をされている。岐阜県の各務原市でも、長時間労働、全国ニュースにもなりましたけれども、月百四十時間を超える超過勤務があるということで、ここの人の手当てなどは本当に喫緊の課題だというふうに思っております。また、ワクチン接種の担当部局に応援職員を派遣をしている、そういう部署も、結局、一人の人に負荷がかかりまして長時間労働などになっております。
このワクチン接種に関する部署の職員も、あるいはワクチン接種の部署へ応援職員を出している部署の職員の方々も含めて、超過勤務のその残業代については国が財源を一〇〇%出すべきだというふうに考えますが、見解を伺いたいと思います。
また、ワクチン接種の部署に人を増やすための財源、ワクチン接種の部署に応援職員を出している部署に人を配置するための財源、このことに関しても一〇〇%国が財源を保障するべきだというふうに考えますけれども、これは厚生労働省と総務大臣に御答弁いただきたいと思います。
○大坪政府参考人 厚生労働省から御答弁申し上げます。
今般のコロナのワクチン接種、先生御指摘のように、通常の予防接種、定期予防接種とは異なりまして、かなり大規模、しかも長期間行うことも想定されます上に、接種の案内ですとか医療機関への協力依頼など細々とした作業が発生しておりまして、自治体の皆様方に大変な御尽力をいただいているところでございます。
このため、厚生労働省といたしましては、医療従事者向けの接種が開始をされました二月の十七日以降におきまして、勤務時間外にコロナのワクチンの接種体制確保事業に従事をされた職員、この方の当該期間の超過勤務手当、これらも御支援申し上げられるような接種体制確保補助金、これを創設をいたしまして、対象としているところでございます。
また、これより前の段階であったといたしましても、組織の中に既にワクチンの接種体制の部署を専属の形で設けていらっしゃるような場合には、そこの部署の職員の超過勤務についても補助金の対象とする、二月の十七日以前であっても対象とするということで、柔軟な対応をしてきているところでございます。
また、一方で、先生の御指摘のありました応援職員を出していった元の部局、ここの超過勤務手当につきましては、直接この補助金の対象とはならない、ワクチン接種の事務に従事したという要件にならないというところではございますが、それ以外にも、厚生労働省では新型コロナウイルス感染症全般の補助金などもございますので、適宜自治体において活用いただければというふうに思っております。
○武田国務大臣 ワクチン接種の庁内体制の在り方につきましては各地方団体において工夫をしていただいているところであり、御指摘の応援職員を出した部署の補充の仕方などについては、地域によってその内容も様々であると考えられております。
これらにより地方団体から大きな財政負担が生じるというお話があった場合には、実情をよく伺い、その内容に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。
○本村委員 大臣の御答弁、玉虫色だなというふうに思うんですけれども。
先ほど厚生労働省の方が御答弁いただきましたけれども、これは派遣元の部署についても使えるんだというお話があったんですけれども、これは超過勤務も、そして人を増やした場合も使えるという理解でよろしいでしょうか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しになりますが、厚労省で設けております接種体制補助金、ここにつきましては、一義的にはワクチンの接種の事務に携わっている方への超過勤務ということになっております。
それ以外の、様々、コロナ感染症に対する補助金等もございますので、そこは自治体の中で工夫していただければということでございます。
○本村委員 総務省から自治体に電話をしたり、大臣がメールをしたり、七月末までに高齢者は二回目接種を終えるようにということで急がせているわけです。そういう中で、職員の方々にかなりの負荷がかかっているというふうに思いますので、国が一〇〇%財源は保障するんだ、このワクチン接種については一〇〇%保障するんだとずっと答弁をしてきたわけですから、国がしっかりと、派遣元の部署も含めて、残業代と人の手当ての財源、保障していただけるということでよろしいでしょうか。
○内藤政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど大臣が御答弁させていただきましたとおり、応援職員を出した部署の補充の仕方は地方団体によって様々でございます。例えば、一人の方が応援に出られたときに周りの人たちでカバーをするということもございますし、応援した方を出したところに更に別のところから送られるというようなケースもございまして、様々、個別でございます。
したがいまして、そういうお話がございました場合には、実情をよくお伺いをして、適切に対応してまいりたいと考えております。
○本村委員 ワクチン接種に関わって様々なところに影響が出ている。その影響した人件費ですとか超過勤務、これについては一〇〇%国が出していただきたいということを改めて強く求めたいと思います。
法案の方に入っていきたいというふうに思いますけれども、年金の支給がどんどんどんどん先送りする中で、生きていくために、年金の支給の年齢まで働き続けなければ生活ができないということで、今回の定年延長は当然の措置だというふうに思っております。
今回、国家公務員の定年の延長に合わせて地方公務員も延長するということですけれども、国家公務員は、六十歳を超える職員の給与月額は六十歳前の七割水準に設定するというふうにされております。地方公務員も、国家公務員と権衡を失しないよう、六十歳を超えたことをもって給与は七割水準というふうに示されております。
なぜそもそも七割なのか。七割の根拠に疑問があるということで、内閣委員会でも塩川議員が質問をしております。
人事院が実施をいたしました職種別民間給与実態調査では、定年延長をしている事業所のうち、六十歳時点で給与を減額している事業所だけの数字を取り出して、そこで比較をして、六十歳前の七割水準ということを言っております。
結局、七割という数字ありきで、都合がいいものを取ってきたのではないかということも疑われるわけでございます。
賃金構造基本統計調査のデータの推移を見てみますと、状況は変化をしているというふうに思います。企業の規模で百人以上の民間における高齢層の従業員の給与の状況ですけれども、五十五歳から五十九歳と六十歳から六十四歳を比べますと、二〇一五年から二〇一七年の三年の平均は七〇・一%でした。これは七割だというふうに言えると思うんですけれども、二〇一七年から二〇一九年の三年間の平均は七六・二%というふうになっております。
人事院の調査でも、給与減額ありとした事業所のみで見てみましても、六十歳の前の年間の給与水準を一〇〇とした場合、二〇二〇年は、課長級で七七%、そして非管理職では七七・二%だということでございます。
内閣委員会で、人事院は、七〇%を改めて検討し直すほどの大きな変化は生じていないというふうに答弁をしておりますけれども、六十歳前の給与の七割と、七六%、七七%というのは、お一人お一人にとったら、月額でいいますと数万円違ってくるものですので、七割に固執しないで、やはり同一労働同一賃金原則に基づいて、しっかりと、七割じゃなくて、引き下げないで保障する、同じ仕事をしているのであればやはり同じ給与水準を確保していくということが必要だというふうに思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○荻野政府参考人 国家公務員の給与につきましては、社会一般の情勢に適応するように変更することとされております。
定年引上げ後の六十歳を超える職員の給与水準につきましては、平成三十年の意見の申出におきまして、多くの民間企業は再雇用制度により対応していること等の高齢期雇用の実情を考慮しまして、厚生労働省の賃金構造基本統計調査及び人事院の職種別民間給与実態調査の結果を踏まえまして、六十歳前の七割の水準となるように給与制度を設計することといたしたものでございます。
直近の賃金構造基本統計調査及び職種別民間給与実態調査の結果を踏まえましても、現時点で、定年引上げ後の六十歳を超える職員の給与水準を改めて検討し直すほどの大きな変化は生じていないというふうに考えてございます。
六十歳を超える職員の給与水準の引下げにつきましては、当分の間の措置と位置づけておりまして、六十歳前も含めた給与カーブの在り方等につきましては、民間企業の状況等や政府における人事評価制度の改善に向けた取組の状況も含む公務の状況等を踏まえながら、引き続き検討していくこととしたいと考えております。
以上でございます。
○本村委員 具体的にちょっとお示しをしたいんですけれども、ある自治体の平均的なケース、六十歳でどのくらいの給与の水準になっているかということなんですけれども、行政職の給料表の三級の百号給、このぐらいで大体退職をするというケースが多いというふうに伺っておりますけれども、そうしますと、月額三十四万四千八百円だったものが、六十歳を超えると、結局、七割ということで、二十四万一千四百円というふうになってまいります。これは税引き前の給与水準でございます。
例えば、地域手当がゼロの場合、そういう地域も多いわけです、超過勤務もないというふうに想定をいたしますと、六十歳というのは本当に働き盛りの方々だと思うんですけれども、その方々の給与水準として低過ぎると私は思うんですけれども、大臣、御見解をいただきたいと思います。
○山越政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のケースがどのようなデータに基づくのか承知しておらず、この点、御回答しかねますが、国家公務員において、民間企業における高齢期雇用の給与水準を踏まえ、六十歳を超える職員の給与を六十歳前の七割水準に設定することを受けまして、地方公務員においても、均衡の原則に基づき、国家公務員と同様の取扱いとすることとしております。
定年引上げに伴い、現行の再任用職員制度と比較しますと、期末・勤勉手当の支給月数の改善とともに、扶養手当、住居手当等が支給されることなどによりまして、一般的には給与水準の改善が期待できると考えております。
また、国において、六十歳を超える職員の給与水準の引下げは当分の間の措置と位置づけており、六十歳前も含めた給与カーブの在り方などについては、民間企業の状況や公務の状況などを踏まえながら、引き続き検討していくこととされておりまして、地方公共団体においても同様の取扱いをすることが適当だと考えております。
○本村委員 この総務委員会でも、委員長や理事や委員の皆様方がいらっしゃるんですけれども、約四割は六十歳を超えた方々でございます。そういう状況を見てみますと、皆様、ばりばり仕事をやっておられるというふうに思うんですね。それなのに七割に削減で、平均的なケースだと税引き前で二十四万円ということになりますから、物すごく、しっかりとした評価がされていないというふうに思います。
全国労働組合総連合、あるいは愛知県の労働組合総連合の皆様が、最低生計費を積み上げ方式で出してくださっております。集めたサンプルは二万人以上のサンプルでございます。
これは単身の二十五歳の労働者のケースですけれども、健康で文化的な生活を送ろうと思ったら、大体月二十二万円から二十四万円必要なんだと。これは、例えば、飲み会でありましたら、一回当たり三千円、月一回だけと計算をしたりですとか、食費は一日千二百円で計算をしたりですとか、家賃は四万五千円というふうに計算して、かなり厳しめの数字で積み上げたものですけれども、二十二万円から二十四万円、最低生計費がかかるということをお示しをいただいているわけです。
四十年近く働いて、最低生計費ぐらいしか給与が保障されない。もっと私は引き上げるべきだ、七割に引き下げないでおくべきだというふうに思います。
六十歳を超えたら給与水準が七割に減らされるというのは、これまでの職務給原則を壊してしまうのではないかというふうに思うんですけれども、見解を伺いたいと思います。
○山越政府参考人 お答えいたします。
地方公務員の給与につきましては、地方公務員法におきまして、国家公務員と同様、職務と責任に応じて決定されることとされておりますが、いわゆる基本給であります給料について見ますと、同一の職務の級の中でも一定の幅が設けられ、具体的な水準は諸要件を考慮して決定することとされておりまして、同じ職務と責任を有する職員間でその額に差が生じることは予定されているところでございます。
また、国家公務員の定年引上げ後において、六十歳を超える職員の給与を六十歳前の七割水準に設定する措置については、現行の俸給の決定方法を踏まえつつ、現時点の民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、当分の間の措置として設定されたものでありまして、地方公務員の給与についても同様の考え方でございます。
これらのことから、地方公務員の定年引上げ後において、六十歳を超える職員の給与を六十歳前の七割水準に設定する措置は、職務給の原則に反するものではないと考えております。
○本村委員 同じ仕事をしていても六十歳以降は七割に引き下がってしまうというのは本当に理不尽だというふうに思います。
今の再任用の制度がかなり低いわけですから、それよりはいいふうになるというふうには思いますけれども、やはり、経験や様々な知識をちゃんとした評価をして、減額をするのはやめるべきだということを、見直していただきたいということを重ねて申し上げたいというふうに思います。
それで、先ほど来御議論がございましたけれども、この定年延長に当たって、新規採用や、中途採用や、就職氷河期世代や女性や障害者の正規採用、毎年行われなければならないというふうに、同時並行で行わなければならないというふうに思いますけれども、これは大臣に御見解をいただきたいと思います。
○武田国務大臣 地方公共団体が各分野において専門的な知見を継承し安定的に行政サービスを提供するため、定年引上げ期間中においても一定の新規採用を継続的に確保することが必要であると考えております。
○本村委員 継続的に新規採用が必要なんだと大臣はおっしゃっておりますけれども、そうでしたら、定年延長と新規採用、これを両立するためには、定員を増やすか、あるいは六十歳以上の方は定員から外してもいいよという運用をするか、どちらかでなければ両立できないというふうに思います。
どちらかをやって、新規採用、中途採用、氷河期世代、女性、障害者の雇用をもっと進めなければならないというふうに思いますけれども、総務省の御見解をいただきたいと思います。
○山越政府参考人 お答えいたします。
大臣から御答弁申し上げましたとおり、定年引上げ期間中においても一定の新規採用を継続的に確保することが必要であるということで考えておるところでございますが、一方で、その具体的な対応については、地方公共団体がその実情に応じてこれから検討していただく必要があると思っています。
定年引上げに向けて、今後、地方公共団体において、職員の意向を確認しつつ、各職種の業務量の推移や年齢構成の平準化を見据え、定年引上げ期間中の一時的な調整のための定員措置も含めた中長期的な視点での採用、退職管理の在り方を御検討いただく必要があると考えておりまして、総務省としては、まずその状況を把握してまいりたいというふうに思っております。
○本村委員 定年延長と新規採用を両立していくためには、そのための財源が必要でございます。国としても十分な財源措置をしていただきたいと思いますけれども、これも総務大臣にお願いしたいと思います。
○武田国務大臣 地方公共団体は、様々な行政分野で住民生活に身近な行政サービスを担っており、各分野において、専門的な知見を継承し、安定的に行政サービスを提供することが重要であります。
そのため、定年引上げ期間中においても一定の新規採用を継続的に確保することが必要であり、各団体において、一時的な調整のための定員措置が必要となるかどうかを含めて、適切に御検討いただくべきものと考えております。
その上で、地方財政措置については、こうした地方公共団体の実態なども踏まえつつ、しっかりと検討してまいりたいと考えております。
○本村委員 財源がしっかり示されないと新規採用ができないという、会計年度任用職員のときもそうだったんですけれども、早く財源を示していただいて、安心して新規採用、学生の方々の仕事を確保する、女性の仕事も確保する、障害者の皆さんの仕事を確保する、氷河期世代の仕事を確保するという公的セクターの役割を果たしていただくためにも、財源を早く示していただきたいということも申し上げたいと思います。
それで、六十歳以上で同じ仕事ができるだろうかということも、例えば保育士の皆さん始め、いろいろな方からお声がございます。肉体的、精神的、家庭の事情などで不安を抱えている方もおみえになります。しかし、年金は先送りですから働き続けなければいけない。人事上で、かなり本人の御意向をよく伺って配慮しなければならないというふうに思います。配慮した上で、そのいい事例を横展開していくということが必要だと思いますので、その点、お答えをいただきたいと思います。
あと、先ほど来御議論がございました、高齢者の部分休業制度なんですけれども、条例化、今日資料を出させていただきましたけれども、本当に少ない自治体しかまだ条例ができていない。都道府県では二十四都道府県しかありませんし、七政令市しかありませんし、二百ぐらいの市区町村しかないということで、この条例を進めていただきたいというふうに思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○山越政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、地方公務員の業務の中には、加齢に伴う身体機能の低下等により、若年者層と同様の職務内容を高齢期の職員が遂行することが困難な業務や、変則的な勤務が多いなど高齢期の職員にとって厳しい労働環境と考えられる業務もあると考えております。
こうした中、各地方公共団体におかれては、高齢期の職員が最大限活躍できるよう、配置上の工夫などの条件整備、職員の健康及び福祉を考慮した勤務条件の確保など、各団体の実情と個々の職員の能力、適性に応じ、職務の設定や具体の人事配置を行っていくことになると考えております。
総務省としては、今後とも、様々な先進的な取組や参考となる資料を情報提供してまいります。
部分休業につきましては、御指摘のとおり、地方公共団体での条例の制定状況は一部にとどまっているところでございます。今回、定年引上げに際しまして、改めて制度の趣旨を周知してまいりたいと考えております。
○本村委員 終わります。
安心して働き続けられるような整備に総務省としても御尽力いただきたいということを申し述べ、終わらせていただきます。
ありがとうございました。
参考資料
https://motomura-nobuko.jp/wp-content/uploads/2021/05/20210518.pdf