しんぶん赤旗 2021年3月25日
デジタル関連法案 問題点ただす 膨大な個人情報提供 本村議員 同意なし 流出危険も 衆院連合審査会
日本共産党の本村伸子議員は24日、デジタル関連法案に関する衆院内閣・総務両委員会の連合審査で、行政のもつ膨大な個人情報が本人同意なく外部にわたる危険を追及しました。
本村氏は、関連法案の一つ、個人情報保護法改定案で、匿名加工した個人情報を、民間事業者の提案に応じて地方自治体が提供する義務が課される問題を取り上げ、現行制度の実態をただしました。
個人情報保護委員会の福浦裕介事務局長は、現制度下で提供されたのはこれまでに1件で、住宅ローン「フラット35」を扱う住宅金融支援機構から住信SBIネット銀行への約118万人分だと答弁。匿名加工された個人情報には、性別、年齢、職業、郵便番号や家族構成、年収や住宅取得以外の借り入れ残高など23項目が含まれていたと説明しました。
本村氏は、提案を受けた自治体が、匿名化の作業を外部委託することも可能だと指摘。膨大で詳細な加工前の個人情報が、本人同意なく委託先の外部法人にわたることになり、自治体の管理リスクが増して過重負担になると批判。行政への住民の信頼も失いかねないと迫りました。
平井卓也デジタル改革担当相は「過重負担にならないよう配慮し、住民の信頼を損なわないよう万全の措置を講じる」と答弁。本村氏は、NHKの委託先法人から詐欺グループに契約者情報が漏えいした例があると指摘し、「委託先を認定・監督する仕組みもない。地方自治体への提供義務付けは、やめるべきだ」と強調しました。
議事録
204-衆-内閣委員会総務委員会連合審査会 2021年3月24日-1号
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
まず、マイナンバーカードについてお伺いをしたいというふうに思います。
マイナンバーカードの取得は、国民、住民の皆さんに義務づけられているものではありません。それにもかかわらず、カードを持っていない住民の方が、先日も塩川議員が指摘をされましたけれども、公的サービスが受けられない状態になってしまう懸念、ある自治体ではそういうことが行われようとしているということが指摘ありましたけれども、そうしたことや、あるいは不利益があってはならないというふうに考えております。
これから健康保険証とマイナンバーカードがセットになっていく、そして、運転免許証とマイナンバーカードの一体化については二〇二四年度末にということで進められているというふうに思います。マイナンバーカードの入札についても調べてまいりましたけれども、顔認証システムも導入されている状況でございます。
そういう中で、マイナンバーカードを持つことに御不安がある方、あるいは持ちたくないというふうに思っている方を含め、マイナンバーカードを持たずに生きる権利を是非今後も保障していただきたいというふうに思いますけれども、まず両大臣にお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 今回のデジタル改革関連法案が描く社会像は、デジタルの活用によって国民の一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会であり、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を進めたいというふうに考えています。しかし、多様な幸せの実現ということですから、マイナンバーカードを始めデジタルを全く活用しない生活様式を否定しているものではありません。
ただ、私は思うんですけれども、自分の身分を明かす、アナログの世界でも身分証明書なんですよね、マイナンバーカードは。今までは、運転免許証のコピーとか、健康保険証の顔写真つきとか、パスポートとか、そんなものを使っていたんですけれども、私は、アナログの世界でも、ちゃんとした身分証明書があるというのは、安全、安心な社会をつくっていく上では必須ではないか。プラス、デジタルでも使えるということですから、多くの国民の理解は進み、持っていただけるのではないかと思っております。
○武田国務大臣 マイナンバーカードは、対面でもオンラインでも確実な本人確認ができる、デジタル社会の基盤となるものであり、令和四年度末にはほぼ全国民に行き渡ることを目指し、その普及を進めてまいっております。
公的サービスの利用に関し、マイナンバーカードの機能をどう利用するかについては、当該サービスの性質に応じて、所管する各府省や地方公共団体において判断されるべきものでありますが、政府としては、昨年十二月に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画などに基づき、様々なカードの利活用シーンの拡大などを進めているところであります。
こうした取組を通じて、マイナンバーカードの利便性を高め、その普及促進を今後とも進めてまいりたいと考えております。
○本村委員 済みません、これからもマイナンバーカードを持たずに生きていけるということを保障していただきたいというふうに思いますけれども、先ほど平井大臣は、それは否定しない、持たないでも生きていけるんだということをおっしゃったと思うんですけれども……(武田国務大臣「委員長」と呼ぶ)
○石田委員長 ちょっと待ってください。
いいですか。
○本村委員 時間がないので、先に進めさせていただきたいというふうに思います。
先ほど平井大臣が、マイナンバーカードを持たずにいるということを否定するものではないんだということを御答弁いただいたということを確認をさせていただきたいと思います。
現行の行政機関個人情報保護法では、個人情報の匿名加工情報の提供が位置づけられてまいりました。
そこで、国などの行政機関で、匿名加工情報の提供をするためのファイル、個人情報ファイルというのは何件あるのか、そのうち提供実績、お示しをいただきたいと思います。
○福浦政府参考人 お答え申し上げます。
行政機関個人情報保護法におきましては、行政機関が事業者からの提案を募集しまして、提案があった場合には、審査を行った上で、一定の個人情報ファイルを構成する保有個人情報につきまして、特定の個人を識別することができないように加工した行政機関非識別加工情報を作成し、提供する制度が設けられております。独立行政法人等につきましても、同様の制度がございます。
令和二年度の提案募集の対象となった個人情報ファイルにつきましては、行政機関につきまして三百六件、独立行政法人等につきましては千七百三十五件でございます。
また、当該制度によります提案募集は平成二十九年度から実施をされておりますが、これまでの実績としましては、独立行政法人住宅金融支援機構が提供を行った一件と承知いたしております。
○本村委員 どこの事業者に提供されておられますでしょうか。どこの事業者に提供したか、お示しをいただきたいと思います。
○福浦政府参考人 これまでの実績としまして、今申し上げたとおり、独立行政法人住宅金融支援機構が提供を行った一件でございます。(本村委員「どこへ」と呼ぶ)ちょっと今確認……(本村委員「時間を止めていただきたいと思います」と呼ぶ)
○石田委員長 では、ちょっと時間を止めてください。
〔速記中止〕
○石田委員長 では、速記を起こしてください。
福浦君。
○福浦政府参考人 申し訳ございません。
提供先でございますが、住信SBIネット銀行でございます。
○本村委員 住宅金融支援機構から提供をした情報は何人分でしょうか。
また、資料の一に、細かい資料だというふうに言われましたけれども、住宅金融支援機構の個人情報ファイルを掲載した資料を載せさせていただきました。二十種類の個人情報ファイルがありまして、その中に、本当に膨大な、数々の個人情報がこのファイルの中に載っているということを示しております。
この二十種類のファイルのどのファイルの中から出したのか、情報はどのようなものだったのか、利用目的は何か、具体的にお示しをいただきたいと思います。
○福浦政府参考人 お答え申し上げます。
独立行政法人等非識別加工情報に含まれる本人の数でございますが、約百十八万人ということでございます。
また、非識別加工を行った個人情報ファイルの名称でございますけれども、個人融資マスターデータファイルでございます。
提供された非識別加工情報には、ID、住宅取得以外の借入残高、自己資金、融資申込金額、融資申込金額のうちボーナス返済分、融資種別、返済期間、職業、業種、就業時年齢、申込本人前年年収、収入合算者の前年年収、性別、申込時の年齢、家族構成、現住居形態、同居家族人数、現住所郵便番号、購入物件郵便番号、住宅床面積、土地取得費、建物購入価格、勤続年数が含まれてございます。
これらのデータにつきましては、特定の個人が識別できないように加工いたしているところでございます。
また、利用目的でございますけれども、幅広い客層に安価で優良な住宅ローンを提供するために、AI審査モデルの構築に活用したということでございます。
○本村委員 百十八万人分ということで、郵便番号もあるということで、かなり特定をされる可能性もあるというふうに思っております。
この匿名加工をした方は、どなたというか、どの機関でしょうか。
○福浦政府参考人 お答え申し上げます。
独立行政法人住宅金融支援機構自身が非識別加工を行ったということでございます。
○本村委員 手数料などの規定がございますけれども、この匿名加工情報を依頼した者が機構に幾ら払ったのか、お示しをいただきたいと思います。
○福浦政府参考人 手数料につきましては、契約当事者間の、特にその事業活動に関わるものでございまして、秘密事項ということの整理でございます。当委員会では承知をいたしておりません。
○本村委員 御本人の同意もなくそうやって勝手に情報を加工して使って、その対価として幾らもらったのかということはしっかりと明らかにするべきだと思いますけれども。
○福浦政府参考人 繰り返しでございますけれども、費用につきましては、その事業活動に関わるものでございます。公表にはなじまないものと考えてございます。
○本村委員 是非明らかにしていただきたいというふうに思います。
このデジタル関連法案の中の個人情報保護法の改定案の中では、地方公共団体も匿名加工情報の提供の提案に応じなければならなくなるわけです。
少し確認をしたいんですけれども、ファイルには膨大な個人情報が入っておりますけれども、匿名加工をもし地方自治体が委託する場合は、ファイルの全部を出すのか、それとも分けて出すのか、お示しをいただきたいと思います、お分かりになれば。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
ファイルを指定していただきまして、そのファイルで必要な部分につきまして、ですから、ファイル全体の場合もあるし、ファイルの部分の場合もあるかと存じます。
○本村委員 ファイル全体もあるということで、先ほども住宅金融支援機構のものを出させていただきましたけれども、委託をする場合、かなりの膨大な個人情報が委託先に行ってしまうということになってくるわけでございます。
以前、総務省は、地方公共団体の非識別加工情報の作成・提供に係る効率的な仕組みの在り方に関する検討会を行っておりました。その検討は中断をしたということですけれども、総務省は、今日の資料の一番最後のページを見ていただきますと、作成組織というものを検討しておりました。
例えば、A市がこの作成組織にデータを提供して、そして利活用事業者に渡すという仕組みなんですけれども、こういうものも検討していたんでしょうか。
○大村政府参考人 お答えいたします。
御質問いただいた地方公共団体の非識別加工情報の作成・提供に係る効率的な仕組みの在り方に関する検討会では、データを利活用する民間事業者が簡便に地方公共団体のデータにアクセスできる環境の整備及びこれに伴う地方公共団体の負担軽減を図るため、地方公共団体とは別の組織である作成組織におきまして非識別加工情報の作成、提供等を行うことを前提として、作成組織における非識別加工情報の加工基準、安全確保措置等、利用料など事業採算性、こういった論点につきまして検討を行ったものでございます。
○本村委員 こういう組織、加工する組織も検討をして、これは検討を中断したわけですけれども、個々に委託をするのか、こういう組織に委託をするのか、どういうふうに考えているのかお示しをいただきたいのと、どんどんどんどんそういう委託先に個人情報がたまってしまうということになると思いますけれども、その危険性について、平井大臣、御答弁を。
○冨安政府参考人 委託先に対するリスクについて御質問がございました。
この改正案におきましては、地方公共団体から匿名加工情報の取扱いの委託を受けた者に対し、地方公共団体と同等の管理義務等を課すことといたしております。
具体的には、匿名加工情報の個人情報への復元を禁止するとともに、匿名加工情報から削除した情報や加工の方法に関する情報を、漏えい等が生じないように適正に管理する義務を課しております。また、受託業務に従事する者が、正当な理由がないのに個人の秘密に属する事項が記録されたファイルを外部に提供した場合には、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金を科すことといたしております。
また、地方公共団体は、匿名加工情報の作成等を外部に委託する場合には、当然に、受託者を厳正に選定するとともに、受託者に厳正な監督を行うと想定しているところでございます。
○本村委員 委託先の企業にどんどんこうやって、かなり機微な個人情報も入っております、そういったものがどんどんたまっていくということになるんじゃないかというふうに思います。
以前、NHKが契約者の情報を委託法人に渡していた、そこのリスクがあるじゃないかということを私、指摘したわけですけれども、大丈夫ですというふうに言って、結局、その法人から詐欺グループに情報が渡って、そういうことに活用されていた、大丈夫だと言っていたのにそういうふうになったということが実際にございまして、私は大変な危機感を抱くわけでございます。
情報管理へのリスクも、地方公共団体にとって増えます。課題もかなり多いわけでございます。それなのに、この法律では、まずは都道府県と政令市、義務づけをしていく、市町村はその後からだという話ですけれども、義務づけはやめるべきだというふうに思いますけれども、平井大臣、お願いしたいと思います。
○平井国務大臣 データを活用することによる、要するにプラスメリットも非常にあるわけですね。それも国民に還元をされていくものの一つであるというふうに考えています。
地方公共団体の過重な負担とか、そういうものを委員は心配されているとも思うし、国民の心配みたいなものが問題意識にあるんだと思うんですが、まずは、匿名加工情報の作成とか提供が地方公共団体にとって過重な負担となるようなことのないように配慮したい、そして、匿名加工情報の外部への提供が住民の信頼を損なうことのないように万全の措置を講じていきたい、こう考えております。
○本村委員 万全の措置と言うんですけれども、こうやって、以前は、作成組織をつくって、認定、監督ということが委託するところにもかかっているんですけれども、そういうふうになっているんでしょうか。
○石田委員長 ちょっともう一度。
○本村委員 以前、A市から作成組織にデータを渡すということで、加工してもらうということで、そのときに国の認定ですとかそういう仕組みを考えていたわけですけれども、そういう仕組みになっているか。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
現在の法律の仕組みでは、そういう認定の仕組みにはなっておりません。
○本村委員 委託をした先で本当に個人情報保護が図られるのかという大変不安があるわけでございます。そのことに対する手だてが不十分だということも含めて、義務づけはやめるべきだというふうに考えております。
地方公共団体というのは、相談であったり、あるいは施設の利用であったり、あるいは申請、届出、許認可、調査などによって様々な個人情報が集積をしているわけでございます。匿名加工をしたということではありますけれども、本人の同意を得ず、信頼を失う、リスクを高めるこういうやり方はやめるべきだ、本人の同意もなくこういう個人情報を利活用するやり方はやめるべきだということを強調いたしまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
参考資料
https://motomura-nobuko.jp/wp-content/uploads/2021/03/20210324.pdf