しんぶん赤旗 2019年4月13日
女性活躍推進法改定案審議入り/ハラスメント禁止を/本村議員、国際水準の規定求める/衆院本会議
企業にパワハラ防止措置を義務付けることなどを盛り込んだ女性活躍推進法等の改定案が12日、衆院本会議で審議入りし、日本共産党の本村伸子議員が質疑に立ち、ハラスメントの禁止規定やセクハラ救済機関の創設を求めました。
同法案は、企業にパワハラ防止措置を義務付け、パワハラ、セクハラ、マタハラ(妊娠・出産を理由としたハラスメント)を相談した労働者への不利益な取り扱いを禁止します。労働政策審議会で労働者側が求めたハラスメントの禁止規定は盛り込まれませんでした。
本村氏は、国際労働機関(ILO)が6月の総会で、拘束力をもつ「働く場での暴力とハラスメントをなくすための条約」を採択する見込みだと指摘。国際水準に沿ったハラスメントの禁止規定の創設を求めました。
加えて、既に事業主に対する防止措置が義務付けられているセクハラでは、被害を相談したり、調停を申し立てても十分対処されないのが実情だと強調。「防止措置義務だけでは人権侵害に対する救済がされない。独立した救済機関を早急につくるべきだ」と主張しました。
本村氏は「就職活動中の学生に対するセクハラや性暴力も深刻だ」と指摘。「ILO条約案のように、保護・救済の対象を就活中の学生や求職者、フリーランスなどに広げ、第三者によるハラスメントも規制の対象にするべきだ」と訴えました。
根本匠厚生労働相は、いずれについても消極的な姿勢でした。
議事録
衆-本会議-18号 2019年4月12日
○本村伸子君 私は、日本共産党を代表し、女性活躍推進法等改正案について質問をいたします。(拍手)
ハラスメントは、個人の尊厳、人格を傷つける許されない行為であり、働く場でのハラスメントが、一人の人生を狂わせ、一人の働き手を経済社会から失わせるという深刻な結果をもたらしています。
被害者が声を上げ、ミー・トゥーなど世論が高まる中、包括的なハラスメントをなくす立法が待たれています。
世界では、働く場におけるハラスメント規制が大きな流れになっています。
ILO、国際労働機関は、ことし六月の総会で、ハラスメント禁止を盛り込んだ、働く場での暴力とハラスメントをなくすための条約を採択する見込みとなっており、加盟国にはこの国際基準に沿った取組が求められています。
日本政府は、この条約にどのような姿勢で臨むのですか。今回の法案はILO条約の批准を前提としているのかどうか、答弁を求めます。
日本でも被害は深刻です。
職場のハラスメントが原因で起こった生活上の変化についての連合の調査では、仕事のやる気がなくなった、ミスやトラブルがふえたが約五割、仕事をやめた、かえたは約二割、心身に不調を来した、三割強、夜、寝られなくなったは約二割となっています。
ハラスメントがどのような影響を与えるのか、大臣の認識を問うとともに、厚生労働省はしっかりとした調査を行うべきです。
今回の法案には、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントと同様に、パワーハラスメントについて、事業主の防止措置義務が入りました。
なぜ、最も期待されていた、ILO条約案にもあるハラスメント禁止規定を入れなかったのですか。ハラスメント禁止規定の必要性について、提出者にも認識を伺います。
現行の男女雇用機会均等法は、セクシュアルハラスメントに対して事業主の防止措置を義務づけています。
しかし、被害を受けた女性が労働局に相談に行っても、どちらが悪いという判断はできないと言われている実態があります。しかも、相談しても、その後どうなったか知らせてくれないとの声も出されています。
紛争解決援助や調停も、事業主が協力を拒めば、解決されないまま終わってしまいます。
裁判に訴えても、均等法は事業主への行政指導のための法だからと、人権侵害に対して適正な救済がなされていません。長期間かかる裁判に勝ったとしても、低い賠償金で、職場復帰もできていない実態があります。
事業主の防止措置義務だけでは被害者が救済されないことは、こうした実態からも明らかです。
被害者の願いは、被害を認めてほしい、謝罪をしてほしい、二度とないようにしてほしいというものです。少なくとも、セクシュアルハラスメントは、禁止規定を入れ、何が禁止される行為なのか法律に明記し、被害者を迅速に救済する独立した救済機関を早急につくるべきです。
安倍首相は、相談したことによる不利益取扱いの禁止規定の創設によって、労働者がちゅうちょなく相談できるようになると私に答弁しましたが、相談しても、禁止規定がなければ、結局、被害が認定されず、人権侵害に対する適正な救済はなされません。
また、ハラスメントを受けたときの対応に対する不利益取扱いも禁止するべきです。
就職活動をしている学生へのセクシュアルハラスメント、性暴力も深刻です。保護、救済の対象は、ILO条約案にも示されているように、就職活動の学生、求職者、インターン、フリーランスなど、対象者を広げ、第三者によるハラスメントも規制の対象とするべきです。
世界銀行グループの二〇一八年のレポートは、OECD高所得の国の中で、日本だけがセクシュアルハラスメントから女性を守っていないと名指ししています。国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、セクシュアルハラスメント禁止、制裁措置の立法を求めています。指摘を重く受けとめ、早急な対応をするべきです。
次に、女性活躍推進法についてです。
今、ジェンダー平等の実現に欠かせないのは、男女賃金格差の是正です。ジェンダーギャップ指数世界第一位のアイスランドでは、二〇二二年までに男女賃金格差をなくすために、二〇一八年から、男女賃金格差がないことを証明することを雇用主に義務づけ、格差がある場合の罰則を設けるなど、本気になって取り組んでいます。日本もこうした取組に学び、男女賃金格差をなくすべきです。
そのためには、格差の実態をつかむ必要があります。非正規雇用を含めた全ての労働者の平均賃金及び中央値で見た男女の格差について、答弁を求めます。
諸外国の法制度の研究やハラスメント被害者の実態調査などを行う検討会をスタートさせ、ILO条約水準のハラスメント禁止法や均等法の抜本改正、ジェンダー平等法の創設に踏み出すべきです。
そのことを強く求め、質問とさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣根本匠君登壇〕
○国務大臣(根本匠君) 本村伸子議員にお答えをいたします。
ILO条約の批准についてお尋ねがありました。
ILOの仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約案は、本年六月のILO総会において議論された上で、採択されることが想定されています。この条約案について、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができる基準の内容となるよう、日本政府としても、ILO総会の議論に引き続き積極的に参加してまいります。
仮に条約がILO総会で採択された場合、その批准については、採択された条約の内容等を踏まえて検討してまいりたいと考えています。
ハラスメントが与える影響や調査の必要性についてお尋ねがありました。
平成二十八年度に実施した職場のパワーハラスメントに関する実態調査において、パワハラを受けて、心身にどのような影響があったか調査を行っております。
その結果、怒りや不満、不安を感じた、仕事に対する意欲が減退した、職場でのコミュニケーションが減ったなどの影響があったという回答が多くありました。
また、都道府県労働局において、セクハラの被害を受けたとする方々からの相談や調停の申立てを受けています。こうした事案においては、セクハラを受けたことを上司に報告したが、適切な対応がなされなかったため休職せざるを得なくなった事例等があると承知しています。
こうした実態も踏まえつつ、労働政策審議会において議論を行い、今回の政府提出法案においてハラスメント防止対策の強化を行うこととしています。
ハラスメント禁止規定についてお尋ねがありました。
ハラスメントを禁止する規定については、昨年十二月の労働政策審議会の建議において、民法等他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化等の課題があり、中長期的な検討を要するとされました。
しかしながら、職場におけるハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであり、あってはならないことです。
このため、今回、政府として提出した法案では、国の取り組むべき施策に、ハラスメント対策全般を充実することを明記した上で、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加え、喫緊の課題となっているパワーハラスメントの防止のための事業主の措置義務を設けるとともに、国、事業主及び労働者の責務規定を設け、これらのハラスメントを行ってはならない旨を明確化しています。今回の改正により、ハラスメントのない職場づくりを推進してまいります。
セクハラ防止のための措置義務についてお尋ねがありました。
政府として提出した法案では、これまでの取組に加え、セクハラは行ってはならないものであり、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきことを関係者の責務として明確化するほか、労働者が事業主にセクハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いを禁止すること、労働局の調停制度における意見聴取の対象者の拡大等を行っています。
これらの取組を通じ、セクハラ被害を受けた方の救済に向け、セクハラ防止措置の実効性の向上を図ってまいります。
セクハラ禁止規定と独立した救済機関の創設などについてお尋ねがありました。
セクシュアルハラスメントの禁止規定については、昨年十二月の労働政策審議会の建議において、民法等他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化等の課題があり、中長期的な検討を要するとされました。
また、独立した救済機関を設けることについては、司法以外の機関において正確な事実認定が可能であるか、裁判制度等との関係性をどのように整理するか、どのような組織体制を確保する必要があるかなど、さまざまな課題があるため、その必要性も含めて慎重な検討が必要であると考えられます。
今回、政府として提出した法案では、セクハラ対策の実効性を高めるため、セクハラは行ってはならないものであり、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきであることを、国、事業主及び労働者の責務として明確化するほか、労働者が事業主にセクハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いの禁止等を行っています。
現状でも、悪質な行為は刑法違反に該当し、不法行為として損害賠償請求の対象となり得ます。本法案による改正内容とあわせ、こうした点についても周知啓発を図ることで、セクシュアルハラスメントを行ってはならないことについて国民の理解を深めてまいります。
就職活動の学生等へのハラスメント及び第三者によるハラスメントについてお尋ねがありました。
男女雇用機会均等法等は、事業主に対し、その雇用する労働者に対するセクハラ等の防止についての措置義務を規定しております。このため、就職活動中の学生など雇用関係にない方々については、対象に含まれておりません。
一方、今回、政府として提出する法案では、事業主や労働者の責務として、セクハラ等を行ってはならないことや、その言動に注意を払うよう努めるべきことを明確化しています。こうした責務規定の趣旨も踏まえながら、就職活動中の学生等に対してもセクハラ等を行ってはならないという認識が浸透するよう、必要な対応を検討してまいります。
また、顧客など第三者からの著しい迷惑行為については、今後定める予定のパワハラ防止措置に関する指針において、企業の望ましい取組を明示し、周知啓発に取り組んでまいります。
こうした取組を通じて、ハラスメントのない職場づくりを推進していきたいと考えております。
男女間の賃金格差の是正や実態把握についてお尋ねがありました。
日本の男女間賃金格差には、さまざまな背景が複合した最終的な結果指標という意味合いがあり、特に、管理職比率と勤続年数の差異が主な要因となっています。このため、各企業に対して、これらの要因の解消について、組織的な対応を求めていくことが重要と考えています。
女性活躍推進法では、各企業に対して、この二大要因を含む状況把握や課題の分析、それを踏まえた行動計画の策定等を義務づけています。こうした具体的な取組を通じて、女性管理職への登用を進めるとともに、職業生活と家庭生活を両立しやすくすることなどにより女性の勤続年数が延びることで、男女間の賃金格差の解消が進むと考えています。
なお、男女間の賃金格差の実態を正確に把握するためには、全ての雇用形態の労働者の平均賃金や中央値について比較するのではなく、雇用形態ごとに比較することが適当と考えています。
ハラスメント禁止法の創設や男女雇用機会均等法の抜本改正に向けてのお尋ねがありました。
ハラスメントのない職場づくりを推進するため、今回の政府提出法案では、労働施策総合推進法第四条の国の取り組むべき施策に、ハラスメント対策全般を充実することを明記した上で、パワーハラスメントを防止するための事業主の措置義務を設けるとともに、男女雇用機会均等法を改正し、国、事業主及び労働者の責務規定の新設や、労働者からの相談を理由とした不利益取扱いの禁止等、セクシュアルハラスメント防止対策の強化を図っています。
ハラスメントの禁止規定を設けることは、昨年十二月の労働政策審議会の建議において、中長期的な検討を要するとされましたが、本法案により、ハラスメント対策は大きく前進するものと考えています。今後とも、ハラスメントのない職場づくりを一層推進してまいります。(拍手)
〔国務大臣片山さつき君登壇〕
○国務大臣(片山さつき君) セクシュアルハラスメントの禁止や制裁措置の立法などについてのお尋ねがありました。
セクシュアルハラスメントは重大な人権侵害であり、政府でも、昨年六月に取りまとめたセクシュアルハラスメント防止に関する緊急対策に基づき、外部の者からの通報窓口の整備など、職場における取組も含めた実効的な対策を進めているところです。
新たに禁止規定を設けることは、違法となる行為の要件を明確化するなどの課題があり、慎重な検討が必要であると考えておりますが、引き続き、被害の予防、救済、再発防止に向けて、しっかりと対応してまいります。
男女間賃金格差の是正についてのお尋ねがありました。
アイスランドにおいて、二〇一八年一月から、従業員二十五人以上の企業について男女賃金平等の証明取得を義務づける法律が施行されていることは承知をしております。
我が国における二〇一八年の男女間賃金格差は、男性の所定内給与額を一〇〇とした場合の女性の所定内給与額が七三・三となっており、縮小の傾向にはあるものの、依然として開きがあり、主要国と比較しても低い水準でございます。
この男女間賃金格差の要因につきましては、職場における役職や勤続年数の男女差が大きく影響しているものと考えられます。
このため、今回の改正法案により、女性活躍情報の見える化を更に進めて、企業などによる自主的な女性の採用や育成、役職への登用、両立支援などを促してまいります。
ハラスメント等に関する法改正及び法創設などについてのお尋ねもございました。
ハラスメントに関する諸外国の法制度や実態に関する研究につきましては、昨年六月から、男女共同参画会議のもとの女性に対する暴力に関する専門調査会を開催いたしまして、セクシュアルハラスメントの国内外の法制度や実態などの調査審議を行い、我が国のセクシュアルハラスメントの法制度に係る検討課題などの報告書を取りまとめたところでございます。
また、男女間の賃金格差の解消などの男女の均等な機会及び待遇の確保は非常に重要な課題でございますので、今後とも、先ほど申し上げたような取組を進めてまいりたいと考えております。
以上です。