もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

【12・02・09】設楽ダム建設予定地の地盤問題で国土交通省からの聞き取り/設楽ダム計画の前提である農業用水の「既開発水量」についての農林水産省からの聞き取り

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 2月9日、東京の佐々木憲昭衆院議員の事務所へ行き、設楽ダム建設予定地の地盤問題について国土交通省からの聞き取り、設楽ダム計画の前提である農業用水の「既開発水量」についての農林水産省からの聞き取りを行いました。

 八田ひろ子元参院議員、吉原つねお大治町議と一緒です。今回は、設楽ダム建設の中止を求める会の市野和夫代表もご一緒に行っていただきました。
 設楽ダム建設の中止を求める会の皆さんは、設楽ダム建設中止の一点で、共同できる党派はどの党派とも協力していこうというスタンスです。

 国土交通省には、以下の点での回答を求めていました。

1、「平成4年度設楽ダム地質調査検討業務委託報告書」(平成5年7月、アイドールエンジニアリング)で指摘されている「懸案事項」について、国土交通省としてどのように考え、対応しているのか。

○地質及び地質構造、断層の性情
○ダムサイト付近の岩盤の緩み、風化、被覆状況
○松戸地区の二重山陵地の成因・・・右岸のゆるみが激しい
○第三紀層と先第三紀層との境界状況の把握・・・貯水池外への漏水が懸念
○ダム湖周辺の地滑り・崩壊地の調査

2、設楽ダム基本計画でダムサイト位置が示されているが、その位置で本体工事費用550億円で実施が可能であるとの結論が出ているのか。断層や熱水変性による岩盤状況が考慮され、水漏れ対策を含めた上での費用算定かどうか。

 1点目の個々の問題への明確な回答はありませんでした。資料請求すれば、回答できる旨の回答がありましたので、佐々木憲昭衆院議員事務所にお願いすることになりました。

 2点目については、地質状況を把握した上で考慮したなかで本体工事は550億円と考えていると回答がありました。

 また、国土交通省は、2009年7月に「貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)」を出していること、それは、開発された新技術の導入、新たな研究成果および施工実績から得られたデータ等を踏まえ、より合理的な貯水池周辺の地すべり対策を行うためのものであることなど説明がありました。

 設楽ダムの基本計画は、2008年度にできていますが、この新技術指針は、ちゃんと反映されているのでしょうか?

 この新技術指針に基づいて再検証も行われるという趣旨の発言がありましたが、設楽ダムの場合、再検証を行っている「設楽ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」では地盤問題は全くといっていいほど取り上げられておりません。どうなっているのでしょうか?

 深層崩壊のメカニズムについては、いまだに解明されていないとのことでした。

 資料請求でより明確な回答を得なければなりません。

 農林水産省には、設楽ダム計画の前提である「既開発水量」について聞き取りました。

 政府が使っている概念の「既開発水量」が少なければ少ないほど、新たに開発する必要のある水の量が増えてくるしくみです。

 ※既開発水量の考え方については、愛知県のホームページをご覧ください→http://www.pref.aichi.jp/0000024249.html

 今ある大島ダムや大原、万場、芦ヶ池、蒲郡の4調整池など既存施設を有効に活用すれば、新規に開発する水量は必要ないのです。実際に水はあまっています。

 しかし、あくまで、新規に水量を開発する必要があると設楽ダムをつくろうとしています。

 設楽ダムの基準年である1968年(昭和43年)で算定した「既開発水量」は166683千㎥/年。

 一方で、豊川総合用水事業を含む豊川用水の設計の基準とされた1947年(昭和22年)で算定した「既開発水量」は197000千㎥/年。

 同じ豊川水系でなぜこんな違いが出てくるのでしょうか。

 しかも、農業年でみた場合、2月~8月にかけて、より少雨であった1947年(昭和22年)に比べ、年間を通じても、2~8月にも降水量の多かった1968年(昭和43年)基準で算定した「既開発水量」の方が少なくなっています。

 雨が多い設楽ダムの基準年の方が、「既開発水量」が少ない。普通なら既存施設で確保できる水が多いはずなのに・・・。

 「既開発水量」という概念がそもそもおかしいのです。今の「既開発水量」の概念は、ダムをつくるための概念です。

 実際に確保できる水の量に合わせるべきです。

 市野和夫元愛大教授は、かんがい用水の既開発水量を求める数式、その理論が、豊川用水‐豊川総合用水の現実に合っていない、と以下のことを指摘しています。

 現在のモデルは、用水路、ため池等、および圃場(作物を栽培する田畑)からのみ成るモデルです。圃場が必要とする水だけ、河川から取水して供給するシステムとなっているので、結果として、河川依存のかんがい水量=需要水量=供給可能水量という式がなりたちます。

 ところが、2002年に豊川総合用水事業が完成した後の現実の豊川用水のしくみは、異なっていて、幹線用水路沿いに大きな調整池(約1000万㎥)をつくり、洪水導入(すなわち降雨後の河川流量の多い時期に、その時点で圃場が必要としない水を、調整池に溜め込む)のしくみを取り入れたことにより、水供給能力は大幅に増加しました。

 つまり、雨の少ない時には、調整池にためた水が圃場に使われます。また、雨が多い場合には、水田に必要な用水量は増えませんが、もし栽培施設が増えて、水需要が増えたとすれば、川から取水することは容易ですから、需要が増えれば、調整池の回転数が増えて、増えた需要に対応して水供給量は増加するように工夫されているのです。

 豊川総合用水事業を含む豊川用水の設計の基準年は1968年よりずっと雨量の少ない1947年で、19700万㎥のかんがい用水が供給可能であるように設計されたものです。

 (結論)豊川水系フルプランの新規農業用水の見積もりは誤っている。

 農林水産省の職員の方は、豊川水系の「既開発水量」と現実のしくみとの乖離、計算の誤りに気づいてくれたでしょうか。

 

 

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