もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2016年 10月 4日 第192国会 予算委員会

JR東海 リニアへの3兆円財政投融資

2016年10月5日(水) しんぶん赤旗

リニア公金投入やめよ

本村議員 事業費の膨張は必至 衆院予算委

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(写真)質問する本村伸子議員=4日、衆院予算委

 リニア中央新幹線に政府が財政投融資で3兆円もの公的資金を投入しようとしている問題で、日本共産党の本村伸子議員は4日の衆院予算委員会で、安倍首相に対し「自然を破壊し、生活を破壊し、実験線では健康被害も出ている。住民の声を聞かない、採算が取れないリニアはやめるべきだ」と強く求めました。

 政府は、JR東海に今年度1・5兆円、来年度1・5兆円を財政投融資から貸し付け、30年後から10年間、3000億円ずつ返済を受けるとしています。

 本村氏は「夢の超特急」とリニアを持ち上げる安倍首相に対し「負の影響を認めるか」と質問。安倍首相は「自然環境、生活環境に十分な配慮をしている」と答え、影響があることを事実上認めました。

 リニア事業は、2013年にJR東海の山田佳臣社長(当時)が「絶対にペイしない(引き合わない)」と述べたほど、赤字必至の事業です。本村氏は「財政投融資は赤字事業に貸し付けてもいいのか」として、財政投融資計画の編成で必要となる財政制度審議会で、償還確実性の審議などを行ったのかとただしました。

 麻生太郎財務相は、日程の余裕がなく「持ち回りで(委員)全員に説明した」と十分な審査をしなかったことを明かしました。当初計画より事業費が膨れあがったこれまでの事業を示しながら、リニアの建設費が膨れあがる問題をただしたのに対し、麻生財務相は「時間がのびるというのは十分にありえます。私が生きていれば証明できるが、生きていられる保証がない」などと発言。事業費が膨れあがることを事実上認めた答弁に本村氏は「無責任です」と厳しく批判しました。

 リニア計画の工事認可はJR東海の全額自己負担が前提でした。本村氏は「公的資金を入れる話で前提が変わってしまった。工事実施計画の認可を撤回すべきだ」と求めました。また、JR東海の関係者の参考人招致を要求しました。

 

議事録

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。

 リニアの問題について質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回、リニアへ財政投融資で三兆円もの公的資金を投入することを経済対策としております。本会議でも、人口減少とそれを上回る高齢化が同時に進行する日本という表現がございましたけれども、人口減少、高齢化が進む日本で将来世代にリスクを押しつけて本当にこういう大型開発を進めてもいいのか、過去に失敗した道を繰り返すのではないかということが問われております。

 リニアは、品川から大阪まで四百三十八キロ、今世紀最大の事業です。南アルプスを初めてトンネルで穴をあけ、ぶち抜き、環境大臣も、本事業の実施に伴う環境影響は枚挙にいとまがないと言うほど、自然環境に甚大な被害を与えます。

 日本で有数の活断層地帯を通過するにもかかわらず、ことし五月二十六日の日本共産党辰巳孝太郎参議院議員の質問に対して、国土交通省鉄道局長は、個別の活断層のずれに対する評価はしていないと答弁し、安全性についても疑問があります。

 地権者の方々も多く、机上で勝手に線を引いて、そこに住む方々の生活環境を土足で踏みにじり、まさに生存権、人格権を踏みにじっている事業です。生活を壊さないでほしいと、沿線地域の方々から悲痛な声が多く寄せられております。

 安倍総理にお伺いをいたします。

 安倍総理はリニアについて夢の超特急だというふうに言っておりますけれども、リニアには負の影響がある、マイナスの影響がある、これはお認めになりますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 リニア中央新幹線につきましては、現下の低金利環境を生かしまして、財政投融資を活用することで大阪までの全線開業を最大八年間前倒しし、そして整備効果を早期に発現していく考えでありまして、この全線開業により、三大都市圏が一時間で結ばれ、人口七千万人の世界最大の巨大な都市圏が形成されるわけでありまして、我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済全体を発展させるものであります。

 一方、リニア中央新幹線は大規模な事業であることから、自然環境や生活環境に十分な配慮を行いながら事業を進めていくことが必要であります。

 このため、環境影響評価の手続の中で環境大臣及び国土交通大臣から環境保全への適切な配慮を求める旨の意見を述べるとともに、本事業の工事実施計画の認可の際に、地域住民等への丁寧な説明により地域の理解と協力を得ること、モニタリング等により確認しながら環境保全に努めること、そして南アルプストンネル等における安全かつ確実な施工に努めることを国土交通大臣より求めたところでありまして、環境への配慮や、工事中及び開業後の運行も含めた安全性の確保が適切に行われるよう、国土交通省からJR東海を指導監督させたいと考えております。

本村(伸)委員 総理は、公的資金は確実に償還されるということを本会議でおっしゃいました。その総理の発言について、総理が根拠を持ってその発言をしているのかということについて質問をさせていただきたいと思います。

 今回は、リニアに財政投融資で、今年度一・五兆円、来年度一・五兆円、合計で三兆円の公的資金をJR東海に入れる計画、返済は三十年後でございます。三兆円で済めばいいんですけれども、三十年後から十年間、毎年三千億円ずつ返済する計画です。そもそも、リニアは絶対にペイしないと、二〇一三年九月、記者会見で当時の山田佳臣社長が述べて、単体では採算がとれない事業だというふうに言われております。

 安倍総理にお伺いをいたしますけれども、財政投融資は赤字の事業に貸してもいいんでしょうか。

麻生国務大臣 計画を読まれた上で質問しておられるんだと存じますが、これは、平成二十三年の交通政策審議会の答申の中で、JR東海が収益力の高い東海道新幹線と一体的に経営を行うということで、経営の安定性を確保しながら事業を遂行できると確認されておるところであります。

 ちなみに、JR東海の経営状況を見ましても、この数年間を見ましても、少なくとも安倍内閣になってから、二千三百九十八億円が二十三年のJR東海の経常、経常利益ですけれども、二十四年が三千、二十五年が三千七百、二十六年が三千九百、約四千です、そして平成二十七年が四千九百五億円と、確実に経常利益を出しておるという会社と一体でありますので、それだけ見ますと、問題があるという御指摘は決して反対はしませんけれども、私どもといたしましては、経営のしっかりしたJR東海と一緒にやるというところが、我々から見て償還の確実性を期待できるところだと思っております。

本村(伸)委員 三十年後、四十年後、本当に償還できるのかということについてお伺いをしたいというふうに思います。

 資料の一ページ目を見ていただきたいと思いますけれども、財政投融資の計画の編成ということで書かれた財務省の資料を持ってまいりました。

 この紙、下の方を見ていただきますと、財政投融資の計画編成に当たっては、財政審が二度にわたってあることが一般的な流れだというふうに書かれております。これは法律事項でもあるわけですけれども、この財政審を開いて償還確実性や赤字になるリニアの事業についてちゃんと審議をしたのか、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 財政制度審議会、その中の財政投融資分科会からの意見聴取も踏まえた編成作業を経て閣議に提出されておりますが、今回のリニア中央新幹線への貸し付けにつきましては、未来への投資を実現する経済対策を踏まえて、私どもが同様の手続を経て編成を行ったところであります。

 今回の場合は、八月二日の経済対策の閣議決定から補正予算の閣議決定までの期間が極めて短かった、御存じのとおりでありまして、したがいまして、日程的に困難でありましたので、分科会長と御相談の上、議事規則にのっとりまして、持ち回りのように全員に対して御説明をさせていただきました上、原案について御了解いただき、御意見を含めた議事要旨を公表いたしておりますのは御存じのとおりです。

本村(伸)委員 三兆円という巨額の公的資金投入を持ち回りでやるというのは、本当にいいかげんだというふうに思います。

 緊急だからとおっしゃいますけれども、リニアが前倒しになるのは二〇二七年より後の話で、緊急性はないんですよ。しっかりと審議をすることが求められている問題です。いろいろ検証していきたいと思いますけれども、本当にリニアは九兆円で済むのかどうか、このことについても伺いたいと思います。

 リニアは品川から大阪まで建設費九兆円と言われておりますけれども、その根拠を出してくださいというふうに申し上げましたら、資料の二枚目を見ていただきたいんですけれども、この資料、たった一枚が出てまいりました。これ以上のものを出してほしいと言いましたけれども、これだけだ、これしか出せないんだというふうに国交省はおっしゃっておりましたけれども、これは名古屋までのものでございます。これで九兆円の根拠にはならないというふうに思います。

 工期だって延びる可能性がある、そうすれば、事業費だってまた膨らむ可能性があるんです。当初計画よりもどんどん事業費がふえていくというのはさまざまな事例があるわけですけれども、JR東海が九兆円と言っておりますけれども、財務大臣、これが正しいかどうか、ちゃんと精査をしたんでしょうか。

麻生国務大臣 財務省といたしましては、私どもは技術屋ではありませんので、私どもはお金をお貸しする、財政投融資というお金を、税金というものをやるんです。民業の補完性、償還の確実性、そして政策的必要性と三つが根本です。その三つが全てですから、私どもは、九兆三百億とたしか記憶いたしますけれども、九兆三百億のものが確実にどうなるか。私、生きていたら証明したいと思いますけれども、それまで生きている保証がありませんので、何ともわかりません。(発言する者あり)もう一回言いましょうか。

 あちらに静かにするように言ってください。私に言わないで、あちらに言って。言う方向を間違えておられますから。静かにしてもらうのはあちら、私じゃありません。お願いします。時間を早くしてほしいと言いたいんでしょう。だったら、静かにするように言ってくださいよ。

浜田委員長 静粛に願います。

麻生国務大臣 時間がないから静かにするように委員長に注意してもらいますから。はい、静かになりました。ありがとうございました。

 私どもとしては九兆円という予算を頂戴しておりますので、そのいただいたものに基づいて、我々としてはいわゆる償還の確実性というものが、先ほど申し上げた数字から償還が確実と。時間が延びるというのは十分にあり得ますよ、もちろん。そういった意味では、私どもとしては、それが確実にできるかというと、残念ながらそれまで生きている保証が私にはありませんので、何となく言うのはあれですから……(本村(伸)委員「無責任じゃないですか、そんなの」と呼ぶ)ちょっと、百歳以上、百歳まで生きているという保証はありませんので。

本村(伸)委員 当初の計画よりも膨れ上がった事例として、私も昨年の国土交通委員会でさまざま指摘をしてまいりましたけれども、上越新幹線は当初と比べて三倍以上になっております。これは死亡事故もあった難工事でございました。そういう中で、三・五倍以上の事業費と膨れ上がっております。東北新幹線も、東京―盛岡、これは三倍以上になっております。同じ大深度地下を使う東京の外環道でも、たった十六キロメートルですけれども、三千百五十五億円もことしになって膨れ上がったというんですよ。そして、ことしになって、八ツ場ダムも愛知県の設楽ダムも事業費は増額したということを言っているわけです。

 こういうトレンドがあるわけですから、だからこそ、リニア、この九兆円で済むのかどうかということで根拠を出せと言っている。でも、出てこないわけでございます。

 過大な需要予測についてもお伺いをしたいというふうに思います。JR東海に入ってくるお金、収入の見込みの問題です。

 今と比べて、リニアが大阪まで開通したら、東海道新幹線とリニアで合わせて一・五倍乗客がふえる、かたく見ても一・二倍ふえるというふうに言っております。

 そこで確認をしますけれども、二〇一四年三月十三日、これも辰巳議員の質問ですけれども、交通政策審議会のリニアの需要予測は、生産年齢人口、つまり働き盛りの世代がどんどん減っていくという人口構成を加味した試算になっているかという質問に対して、国土交通省は、生産年齢人口の割合の変化に特化した分析というものは行っておりませんと答弁をいたしました。

 これは事実ですね。国交大臣、お願いいたします。

石井国務大臣 平成二十六年三月十三日の参議院国土交通委員会におきまして、人口の構成を加味した上で需要予測を行っているかという質問がありまして、当時の鉄道局長より、交通政策審議会の需要予測の算出に当たっては、国立社会保障・人口問題研究所の日本の都道府県別将来推計人口等に基づき、将来における人口の減少を前提としている、また、生産年齢人口の割合の変化に特化した分析については特段行ってはおりませんけれども、JR東海の経営状況に関する長期試算見通しの検証については、経済成長率ゼロ%という最も厳しい想定に基づいた需要予測に基づいて試算を行っている旨の答弁をしているところでございます。

 したがって、十分慎重な見通しに基づいて試算を行っているというふうに考えております。

本村(伸)委員 働き盛りの世代の人口が減ることを加味していない、いいかげんな需要予測でこの事業は進んでいるんです。

 安倍首相に言いたいんですけれども、将来の支出、そして収入、これをちゃんと見ないと、償還確実性を審査したということにはならないと思います。財務大臣にちゃんと審査をさせていただきたいというふうに思います。

 そして、もともとリニアの事業というのは、JR東海が全額自己負担でやる、国に資金援助は求めないということを言ってきて認可されたわけです。三兆円も公的資金を入れる話で、前提が変わったんです。前提が変わったわけですから、工事実施計画の撤回をするべきだというふうに思います。

 そして、最後に申し上げたいんですけれども、朝日新聞の社説でも、このリニアの問題について、「国会審議で、JR東海の経営幹部から直接話を聞く機会をもうけてはどうか。JRには国民に対する説明責任がある。」というふうに書かれております。これが国会に対する国民の皆さんの要請です。その声に応えるためにも、JR東海を国会に呼んで、しっかりと審議をするべきです。

 JR東海を呼んだ質疑をこの予算委員会で開いてください。委員長、お願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

本村(伸)委員 自然を壊し、そして生活環境を壊し、実験線では健康被害まで出ております。住民の皆さんの声を聞かない、採算性もとれない、このリニア事業はきっぱりとやめるべきだ、公的資金投入はやめるべきだということを強く申し上げ、質問を終わらせていただきます。

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参考資料

https://motomura-nobuko.jp/wp-content/uploads/2017/06/b3e7d00f98ded4589f467cb21050875e.pdf

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