もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
環境

【13・04・24】設楽ダム公金差し止め訴訟――名古屋高裁が不当判決

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 必要性のない設楽(したら)ダム(愛知県設楽町)に愛知県が費用負担するのは違法だと地元の住民の皆さんはじめ139人が愛知県知事などに公金の支出差し止めを求める裁判の控訴審で4月24日、名古屋高裁(林道春裁判長)は「ダム計画が著しく合理性を欠くとは言えない」として控訴を棄却しました。
 裁判には、設楽町からも何人も来てみえました。
 しかし、たった1分程度で結論が述べられ、終わってしまいました。なぜ、棄却なのかの理由も言いませんでした。あとで判決文を読めとの態度で、本当にひどいと思いました。
 
 市野和夫原告団長は、「行政のダム計画をなぞって違法性がないとした。愛知県一きれいな川を濁流にしようというのに、総合的にみる判断が今の司法にはない」と批判しています。
 
 名古屋地裁の判決も過大な水需要見込みを認めながら、「著しく合理性を欠くとは言えない」と言って原告の皆さんの訴えを退けましたが、今回も同じです。

 どのくらい無駄遣い・環境破壊をすれば、「著しく合理性を欠く」と判断されるのでしょうか。まじめに実態、実績に基づいて、判断してくれない裁判所に憤りを強く感じます。

 原告の皆さんは、最高裁に上告する予定です。
 設楽ダム建設を中止させるまであきらめません。
 皆さんとともに、一層がんばります!!

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設楽ダム費用負担金支出差止請求事件の名古屋高等裁判所による不当判決に関する声明

設楽ダム費用負担金支出差止請求事件の名古屋高等裁判所による不当判決に関する声明

                                  2013年4月24日

                          設楽ダム公金支出差止等請求訴訟原告団
                          設楽ダム公金支出差止等請求訴訟弁護団
                              設楽ダムの建設中止を求める会

 本日、名古屋高等裁判所民事第2部(林道春裁判長)は設楽ダムの費用負担金支出差止等請求住民訴訟(控訴審)において、控訴人である住民らが本訴訟を通じて明らかにした事実を全く理解することなく、住民らの主張を退ける不当判決を下した。

 住民らは、第一審に続き控訴審においても、以下の点を明らかにしてきた。

1 水道用水の供給については、現時点において愛知県の平成27年需要想定値に達する事実は認められず、長期的にも水需要は減少するにもかかわらず、その事実について判断することもなく、豊川水系フルプランが著しく合理性を欠くとは断ずることは出来ないとし、事実を無視した判断をした。

2 洪水調節については、控訴人らが明らかにした、部分的な河道改修だけで設楽ダムよりも安く水位を計画高水位以下にすることが出来ること、そのことについて河川整備計画策定において検討がなされていないことについて、何ら判断をしなかった。

3 流水の正常な機能の維持については、牟呂松原頭首工の毎秒5㎥の制限流量の設定については、情報公開文書により動植物の保護および塩害の防止とも必要性を基礎づける事実が認められないこと、大野頭首工の毎秒1.3㎥の制限流量の設定については、大野放流-牟呂松原取水という有効な代替案があるのに全く検討されておらず考慮すべき事情を考慮していないことを明らかにしたが、本判決はこれらの事実について全く理解をせず、正面からの判断をしなかった。

4 農業用水については、需要に対する供給不足の計算では供給量を用いなければならないのに需要量を用いて、誤った計算をしていることを控訴人は指摘したが、この指摘について全く具体的な判断をせず、一審の判決を追認した。

5 環境については、住民らは、河川生態系やネコギギ、ナガレホトケドジョウ、クマタカ等の希少動物の保全が図れないことを指摘したが、「単なる意見に過ぎない」とした一審判決とは異なり、本判決はその内容に踏み込んで判断した。しかし、本判決は、「特段不合理又は不適切な点があるとは認められ」ないと結論づけており、不十分な環境影響評価に対して司法統制を加えるという観点を完全に欠落させている。

6 灌漑利用者負担金については、矢作ダムの灌漑利用者負担金が、条例もなく徴収されていないということについて、何も触れずに結論を出している。

7 設楽ダム建設予定地の地質の脆弱性については、予定地及び周辺部の岩盤の構造、岩類の風化、及びこれによるマサ化、?透水部の存在等について複数の問題点が存する可能性を認めながら、現時点までの調査資料によっては、予定地がダム建設用地としての適格性をおよそ欠くものであるとまでは認められない、として設楽ダム基本計画が著しく不合理なものとまでは認められないとした。司法の責任放棄である。

 こうした本判決の判断は、住民らが明らかにした事実をまともに受け止めず、公共事業の無駄遣いを司法の立場でチェックしようとせず、むしろ無駄で環境を悪化させるダム事業を積極的に奨励する誤ったものである。

 本判決は司法の役割を放棄した不当な内容であるから、住民らは最高裁判所へ上告手続を行うとともに、引き続き設楽ダムの建設中止に向けてたたかい続けることを表明する。今後とも、みなさまのご支援をお願いしたい。
                                        以上
 

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