もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
環境

【11.03.18】設楽ダムより被災地支援を!の思いこめて設楽ダム建設事業検証に係る検討に関する意見(パブリックコメント)を提出

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 3月18日、設楽ダム建設事業検証に係る検討に関する意見(パブリックコメント)を国土交通省中部地方整備局に送りました。

 ムダで環境破壊の設楽ダムをやっている場合ではない!被災者支援に予算を!―そんな思いで書きました。

 ごまかしの再検証を絶対に許すことはできません。

【提出した意見(1)】
(要旨)

 今回、「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠となるデータの再検証が行われていないことは、国民を欺く背信行為である。
 「河川整備計画」や「水資源開発基本計画」の根拠データの再検証が前提であり、その前提がなければ、対策案においても「方策」の規模や「総概算コスト」が過大になるなど、真の検討ができなくなる。根拠となるデータの科学的、客観的な再検証を行うべきである。

(意見)
 「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠となるデータの再検証が行われていないことは、国民を欺く背信行為である。
 とりわけ、今、東日本の地震・津波の被害、原子力発電所の事故の被害など、多くの方々が亡くなり、多くの方々が苦しんでいる。ムダな大型開発事業を行うことは、厳に慎まなければならない。その予算を被災者支援に回さなければならない。
 その意味からも本当に必要な事業なのか、真剣に検証を行わなければならない。いい加減な再検証であっては絶対にいけない。
 「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠データの再検証は、真剣な検証の大前提であり、その前提がなければ、対策案においても「方策」の規模や「総概算コスト」が過大になるなど、真の検討ができなくなる。
 水道用水・工業用水の需要想定など根拠となるデータの科学的、客観的な再検証を行うべきである。

【提出した意見(2)】
(要旨)

 設楽ダムは選択肢からはずすべきである。設楽ダムの目的は、1.洪水調節、2.流水の正常な機能の維持、3.かんがい、4.水道とされているが、これらの目的のいずれも根拠がなく、設楽ダムは必要のない事業である。

(意見)
 設楽ダムは選択肢からはずすべきである。
 設楽ダムの目的は、1.洪水調節、2.流水の正常な機能の維持、3.かんがい、4.水道とされている。
 これらの目的のいずれも根拠がなく、設楽ダムは必要のない事業である。
 設楽ダムの洪水調節効果は、非常に限られている。貴重な自然環境を守るためにも別の方法(破堤しにくい堤防など堤防強化や、不連続堤による遊水地、緑のダムと言われる森林整備、農地の適正な管理、氾濫原の宅地化・都市化の抑制、河道整備など、流域全体での治水計画)を十分検討するべきである。
 流水の正常な機能の維持に関しては、設楽ダムの有効貯水容量の65%、利水容量(堆砂容量と洪水調節容量を差し引いたもの)の82.2%が流水の正常な機能の維持容量となっており、全国的にみても極めて異常なダム計画となっている。
そもそもダムを建設し、河川の水の流れを遮断することは、本来河川が持っている流水の正常な機能を壊すものである。
 かんがい及び水道に関しても、2001年度(2002年3月)に完成した豊川総合用水事業で確保され、現在はおよそ1億㎥を越える供給余力がある。また、今後の水の需要見通しも実績と乖離した過大な需要見込みとなっている。
 さらに深刻なのは、自然環境、生態系にあたえる影響である。
 設楽ダム建設予定地には、重要だと言われる動植物だけでも181種あり、そのなかで設楽ダムの建設によって、「生息地の消失、改変に伴い、生息環境の多くが生息に適さなくなる」あるいは「生息が確認された個体の多くが消失する」動植物が30種あることが、不十分だと考える環境影響評価書にさえ指摘されている。
 とりわけ国の天然記念物で、世界のなかで愛知県の豊川から三重県の宮川までの伊勢三河湾に流入する河川にのみ生息しているネコギギに与える影響は深刻である。
 環境影響評価書では、ダム建設のため生息できなくなるネコギギを「移植」するとしているが、「豊川水系設楽ダム建設事業環境影響評価書に対する環境大臣意見」でも「現段階ではネコギギの移植に関する知見が十分に得られているとは言えない」と指摘しているようにネコギギの「移植」は、技術的にも未確立であり、実際に国土交通省の実験も何度も失敗し、ネコギギが、将来何世代にもわたって生息し続ける保障はどこにもない。
 2010年には、愛知県で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されたが、世界でもこの地域にしかいない絶滅危惧IB類であるネコギギの豊川における最大の生息地を破壊する設楽ダムを建設することは、生物多様性の保全に逆行し、世界にも恥ずべき行為である。
 くわえて三河湾への環境影響も懸念されている。
 日本海洋学会海洋環境問題委員会は、設楽ダムの建設は、「1)取水によって内湾の環境形成に本質的なエスチュアリー循環の減少をもたらす点、2)停滞したダム湖の汚濁した底層水と底泥が洪水時に流出することで海に多大な負荷がかかる点、3)ダム湖の堆砂に伴って海岸侵食を加速し、干潟・浅瀬を消失させる点に関して、三河湾への影響が強く懸念される。」と指摘している。
 これらの悪影響によって、日本一アサリがわく三河湾・六条潟の環境が悪化し、愛知の漁業の生命線であるアサリ漁にも多大な被害が心配されている。
 ネコギギやクマタカなどが生息する愛知の宝ともいえるこうした自然環境を守り、生物の多様性を保全するためにも設楽ダム建設はやめるべきである。

【提出した意見(3)】
(要旨)

 設楽ダムの安全性に関する総点検を行い、「コスト」を明確にし、対策案と比較をするべきである。
 設楽ダムの建設予定地は、大変地盤が弱く、大きな地震の際に、ダムが決壊した場合の被害は甚大である。仮に地盤の弱さを補う対策ができるとしても、総事業費2093.7億円で完成するという保証もなく、「コスト」を比較する前提が崩れてしまう。M9以上を想定した安全対策をとった上で、比較の基礎となる総事業費を出すべきである。

(意見)
 設楽ダムの安全性に関する総点検を行い、「コスト」を明確にし、対策案と比較をするべきである。
 設楽ダムの建設予定地は、大変地盤が弱く、大きな地震の際に、ダムが決壊した場合の被害は甚大である。仮に地盤の弱さを補う対策ができるとしても、今回、提示された総事業費2093.7億円で完成するという保証もなく、「コスト」を比較する前提が崩れてしまう。マグニチュード9以上の地震を想定した安全対策を万全に行った場合でも2093.7億円で済むのか、総事業費の再検証が必要である。
 実際に、東日本大震災では、福島県藤沼ダムが決壊し、死亡、行方不明の被害者がでている。奈良県の大滝ダム(堤高100メートル)では、試験湛水で発生した地滑りで運用できない状態が続き、建設事業費も当初の230億円から3640億円へ大膨張している。
 現在、設楽ダムの湛水の影響、地すべりについては、可能性がある箇所を抽出調査している段階で、調査結果もまだ明らかにされていない。
 設楽ダムは、地すべりがおきないのか、マグニチュード9以上の大地震においても決壊しないのか、はっきりさせ、総事業費も洗いなおさなければ、対策案との正確な比較はできない。

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